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【第19回:日本一わかりやすいICS講座】計画立案部門(Planning Section)の役割・機能

2020.09.15

インシデント・コマンド・システム(ICS)では、インシデント・コマンダー(IC)のもとには、通常、事態対処部門、計画立案部門、後方支援部門、財務・総務部門の4つのセクションが編制されますが、今回はその中の計画立案部門(Planning Section)についてご説明します。

ICSにおける対策立案部門

計画立案部門の役割

計画立案部門の大きな機能としては次の3つです。

1つは、インシデント状況情報及びインテリジェンスを収集し、評価し、発信する機能です。

2つ目は、インシデントに投入される資源の状況把握機能です。

3点目は、インシデントに関連するすべての文書の収集、記録、及び保管です。

なんだか難しい表現になりましたが、要は、危機対応の最前線が今どのような状況になっているかを把握し、それに対して、今、どれだけの人やモノが投入されていて、インシデントが今後どのような展開になりそうなので、何をどれくらい投入しようかと考えるためのデータを提供する役割です。

計画立案部門の組織

計画立案部門の内部ユニットは役割に即して次のとおりに編制されます。

対策立案部門のユニット構成

・資源管理ユニット  全ての要員のチェックインを把握するとともに、全ての資機材の配備状況と、追加資源の要求状況、及び将来的に必要とされる資源の想定をします。備品、消耗品の使用状況及び過不足を管理し、現場のパフォーマンスを維持しつつ、コストパフォーマンスも追求します。 

・状況把握ユニット  インシデントの現状についての情報を収集して、処理し、分析し、要約するとともにその後の展開も想定します。         

・文書ユニット  インシデント関連のすべての文書を管理し、必要なものはインシデント・アクション・プラン(IAP)の作成に反映させます。また、決定されたIAPは即座に関係する箇所に配布します。

・動員解除ユニット  大規模で複雑なインシデントでは多数の要因が招集されますが、チェックイン後の早い段階から名簿管理され、繁閑に合わせて要員計画を組み、要員が過多とならないよう、コストパフォーマンス観点から、必要に応じて動員解除を行います。人も資源と考えるならば、一番重要な資源については、「資源管理ユニット」から独立させて効率化をはかっているとも言えます。

・技術専門家  情報収集や分析に、高度な専門性を必要とする場合など、技術専門家のようなシングルリソースを設置する場合もあります。

計画立案部門は「ICS組織の頭脳だ」というご意見もありますが、、

よく、計画立案部門は「ICS組織の頭脳だ」と言われる向きもありますが、それはある意味では当たっているし、ある意味では外れています。

人間の頭脳の役割を、五官(目、耳、鼻、口、皮膚)から入る情報を整理し、分析し、解釈し、判断し、やるべきことを決めて、手や足を使って行動を起こし、それを記憶しておくことであるとすれば、計画立案部門も、情報収取して、それを分析する点、またあらゆる記録を整理保存する点では、一緒です。

外れているのは、人の頭脳は意思決定しますが、意思決定は、インシデントコマンダー(IC)や、統合指揮(Unified Command:UC)が実施します。対応の戦略・方針を決めるための、「準備」の範囲にとどまります。

「ICS-PDCAサイクルの守護神」と言ったほうが良いかも、、

計画立案部門は、意思決定はせず、あくまでも「意思決定に資する情報、インテリジェンスを集め」そして「ICやUCによって決められたことを配布・周知する」部署だとしても、そのやり方には、とても大切に守られている原則があります。計画立案部門は、その観点から「ICSにおけるPDCAサイクルの守護神」と言えます。

ICSにおけるPDCA原則とは、

①ICSはリアルデータ主義である  

②ICSは文書主義である 

➂ICSはプロトコル(決められた手順)遵守主義である

ということです。

リアルデータ主義とインテリジェンス・サイクル

インシデント発生から収束までの状況の変化を把握し、報告、連絡、相談の「ホウレンソウ」のルールを定め、定例化しておくことが「状況把握」にあたります。ICSでは、それに加えインテリジェンスも求めています。そして、年々、インテリジェンスに対する重要性が強調されてきています。

よく「インテリジェンスとインフォメーションの違いは?」とか、「インテリジェンス・サイクルとは何か?というご質問をいただきますが、それについては、次回のメルマガで詳しく解説いたします。今回は、「インフォメーションは現場から上がってくる加工前の生データ(raw data)」くらいに考えておいてください。

注目していただきたい点は、ICSにおいては、単なるホウレンソウでは飽き足らず、現場のリアルデータから解釈し、意味づけして、それをインテリジェンス情報 (Finished Intelligence) として完成し、IAP(Incident Action Plan: 当面の実行計画)に反映するという考え方です。

発災時に、短時間の対応が迫られる中で、どれだけ丁寧なプロセスが踏めるかは別としても、そのプロセスを大切にするという考え方は立派です。それをもって戦略が決まり、成否が決まると言っても過言ではありません。

そして、時間的に切迫する中で、生データが加工されていく過程でも、必ずリアルデータに紐づいていることを確認する部署がこの計画立案部門なのです。

もし、データに雑音や誤謬があれば、「プロセス処理」として、データがはじかれるか、修正されます。常に、現場の現実に即していなければインテリジェンスになり得ません。それをチェックする部署が計画立案部門です。

日本の災害対応訓練では、通報連絡の訓練はしますが、それは、ホウレンソウがちゃんとできたかをチェックしますが、現場の情報から意味づけられたインテリジェンス情報に仕立て上げる(戦略を練る)段階までの訓練をあまり見たことがありません。

入ってきた情報に対処はするものの、戦略として練り上げるプロセスが薄いのは、インテリジェンスという認識が弱いせいかもしれません。(次回メルマガをご期待ください)

文書主義における情報収集と配信

ICSの二つ目の原則は文書主義です。すべてのデータは何らかのフォーマットに集約され、その中に地図や写真も入ることがありますが、原則文書主義です。また、ブリーフィングとか会議もプロトコルに従って、主な内容はフォームを使って行うことが中心となります。インシデントコマンダー(IC)の引き継ぎも文書をもって行われます。

すごいのは、この現場データの収集から、取捨選択して、それを意思決定資するように加工して、プランニングPの会議に諮り、そこで決まったことを、関係各部に即時に一斉配布することです。これは機械システムを使うこともありますし、コピーを配ることもありますが、いずれにしても、プランニングPで決められたプロトコルのとおりに、情報は、第一線職場も含めて即座に必要なところに伝達されます。

東日本大震災の時に自治体の職員が困ったことの上位に「何がどうなっているのか全く分からなかった」というのが上位にランクインしています。忙しい人は超多忙でも、手待ち状態で、救助・復旧の機会ロスをしていた職員も多くいたのです。

プロトコルの遵守とPDCAサイクルの維持

ICSのPDCA原則の3番目は、プロトコル(会議体を確実に実行するための手順)を遵守することです。プランニングPに象徴されるとおり、ICSの会議体は、テーマ、議題、参加者、使用フォーマット等が決められています。議題の重複や参加者の重複を避け、事前の調整もできるだけ無くし、合理的に危機対応を進めるようになっています。

原則の2番目の文書主義には、全記録を保存するための文書管理という意義もありますが、文書の収集、作成、配布という作業を、このプロトコルと合わせて行うことによって、災害対応の全体運営のペースを維持・管理しているとも言えます。

それらを取り仕切るのが、計画立案部門ということになります。

ICSについて、まだまだお話したいことは、たくさんあります。ひきつづきのアクセスを、どうぞよろしくお願いいたします。         

文責: 志村邦彦

ご質問・お問合せ:shimura©jerd.co.jp  (©を@マークに変えて送信ください)

 

 

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【第1回】インシデントコマンドシステムの概要・インシデントとは何か?

【第2回】オールハザードとは何か?

【第3回】インシデントの5タイプ

【第4回】インシデントが起きたら初めにやること①:まずは指揮者(Incident Commander)を決めよ

【第5回】インシデントが起きたら初めにやること②:被害状況を把握せよ

【第6回】インシデントが起きたら初めにやること③:「何はともあれ人命優先」が危機対応の最大原則

【第7回】インシデントが起きたら初めにやること④:メンバーのチェックイン、チェックアウト

【第8回】組織づくりの基本①:組織の機能の洗い出し

【第9回】組織づくりの基本②:モジュラー型組織

【第10回】組織づくりの基本③:スパンオブコントロール

【第11回】組織づくりの基本④:指揮命令系統の一本化

【第12回】組織づくりの基本⑤:災害対策本部(EOC)

【第13回】組織づくりの基本⑥:指揮と調整の違いについて

【第14回】インシデント・コマンド・システムにおける目標設定

【第15回】計画(IAP:インシデントアクションプラン)を立てる

【第16回】事態対処部門(Operations Section)の役割・組織編成のやり方

【第17回】現場指揮所と現場集結拠点を設置する

【第18回】災害対応の初動対応のあり方

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