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【第8回:日本一わかりやすいICS講座】組織づくりの基本①:組織の機能の洗い出し

2020.01.08

ICS(インシデントコマンドシステム)は、組織づくりそのものであると、このコラムを通して何度か申し上げてきました。この回からは、ICSの核心部分ともいえる組織づくりについてお話ししていきたいと思います。

組織といっても、会社や病院、学校など、皆さんにとって馴染みのある組織とは異なる言葉が出てくるので戸惑うかもしれませんが、わかりやすく解説します。今回は、ICSで組織づくりをするために必要な機能についてお話ししてきます。

インシデント対応に必要な機能は何か?

ICS(インシデントコマンドシステム)における最も基本となる組織機能は以下の通りです。

  1. 現場指揮者(インシデントコマンダー)
  2. 事態対処部門
  3. 対策立案部門
  4. 後方支援部門
  5. 総務部門

上記の5つが必要な機能になります。(名称を覚えるより、5つの機能をご理解くださいね)

インシデントの規模に応じて、機能ごとに部門長を任命することもあります。
ということは、この5つの機能はどんなインシデントでも必要となりますが、場合によっては、現場指揮者たちが②や③や④や⑤を兼務してもよいのです。(後述)

①現場指揮者(インシデント・コマンダー)

現場指揮者(インシデント・コマンダー)は、災害現場において現場の指揮命令を一手に担うリーダーのことです。

このコラムの中でも、「指揮者」という言葉を何度か使ってきましたよね。この機能は、インシデントの内容・規模がどんなものであれ、二人以上が集まったら、必ず設置しなければならないものです。

ICSが定着して何十年も経つ米国では、現場指揮者の育成のためのプログラムがちゃんと設けられています。米国と同じ通りにする必要はありませんが、日本でも指揮者を育成するための仕組みは、これから整備していかなければなりませんね。

②事態対処部門

事態対処部門は、主に災害の最前線現場に赴いて災害対応にあたります。一番多くのメンバーが集まるところです。

インシデントによって必要となる下記の業務を実施します。

【例】

  • 消火、延焼防止
  • 被災者の捜索・救助する
  • そのための手段を考える・計画を練る 等

③対策立案部門

対策立案部門の役割は、インシデントにまつわるあらゆる情報の取りまとめ、それに基づいた事態収束に向けての活動計画の資料作成(IAP:インシデントアクションプラン)、人員・資材の調整などを行う部門です。

前のコラムで、サイズアップ(状況の把握)と目標設定について話しましたよね?災害現場で集めた被害状況を対策立案部門が取りまとめます。それに基づいて、対策立案部門が次に打つ手を練るのです。

④後方支援部門

一言でいえば、現場で災害対応に回る人間が活動しやすいようにバックアップするのが後方支援部門の役割となります。

【例】

  • トラック・ヘリといった輸送機器の確保
  • 現場で災害対応に当たる人員への食事の手配
  • その他必要な機材、資材の手配 等

⑤総務部門

災害対応に要するお金・時間の管理をするのが総務部門の役割です。

5つの機能をバーベキューパーティの例でみると


ちょっと難しい言葉がならびましたので、バーベキューパーティを例にして、その機能をご説明してみます。

まず、誰かが「そうだ! バーベキューをやろう! みんな集まれ!」と言い出して、日にちと時間と場所とメンバーを決めます。(現場指揮者)

そうすると、バーベキューセットや日よけテントを設置し、火を熾し、肉を焼く人が決まります。(事態対処部門)

また、参加予定者にお知らせメールを出して、参加の可否を確認し、人数に応じて必要なお肉や飲み物や薪の量を考える人が出ます。(対策立案部門)

それに基づき、お肉・飲み物・薪の買い出しに行きます。火を扱う人たちへの熱中症予防の飲み物の提供も行います。(後方支援部門)

何に幾らぐらい使うか、お金の算段をつけ、お店に支払います。参加者から会費を徴収して、残金が出れば、会計報告をして、みなさんに返金します。(総務部門)

バーベキューパーティを例にとってご説明しましたが、皆で力を合わせて、効率的な組織運営をしようとすれば、役割分担(基本となる機能分担)を決めて、それぞれがきっちり仕事をすることが大切になります。それは、災害対応においても大きく変わらないのです。

インシデントの規模に応じて必要な機能を備えるべし

インシデント対応に必要な機能5つを説明してまいりました。これらの機能は必ず頭に入れておいてくださいね。

でも、あらゆるインシデントでこれら機能を必ず設置しなければならないというわけではありません。

現場指揮者は、どんなインシデントであろうとも必ず任命しなければなりません。

たとえば、物損交通事故みたいな規模の小さいインシデントをイメージしてみてください。せいぜい必要な要員は2〜3人程度、3時間くらいあれば事態は収束するでしょう。現場指揮に当たる人間は必要かもしれませんが、炊き出しの準備とか資材の調達までする必要はないですよね?

残りの4つの機能は、インシデントの内容・規模に応じて、現場指揮者が求められる機能の優先順位を見極め、設置の必要・不要を判断すれば良いのです。

今回は、インシデント対応に必要な機能についてざっと触れました。これらの機能の詳細は、別のタイミングで改めて説明させていただきますね。

文責: 志村邦彦

ご質問・お問合せ:shimura©jerd.co.jp  (©を@マークに変えて送信ください)

日本一わかりやすいインシデント・コマンド・システムのコラム一覧

【第1回】インシデントコマンドシステムの概要・インシデントとは何か?

【第2回】オールハザードとは何か?

【第3回】インシデントの5タイプ

【第4回】インシデントが起きたら初めにやること①:まずは指揮者(Incident Commander)を決めよ

【第5回】インシデントが起きたら初めにやること②:被害状況を把握せよ

【第6回】インシデントが起きたら初めにやること③:「何はともあれ人命優先」が危機対応の最大原則

【第7回】インシデントが起きたら初めにやること④:メンバーのチェックイン、チェックアウト

【第8回】組織づくりの基本①:組織の機能の洗い出し

【第9回】組織づくりの基本②:モジュラー型組織

【第10回】組織づくりの基本③:スパンオブコントロール

【第11回】組織づくりの基本④:指揮命令系統の一本化

【第12回】組織づくりの基本⑤:災害対策本部(EOC)

【第13回】組織づくりの基本⑥:指揮と調整の違いについて

【第14回】インシデント・コマンド・システムにおける目標設定

【第15回】計画(IAP:インシデントアクションプラン)を立てる

【第16回】事態対処部門(Operations Section)の役割・組織編成のやり方

【第17回】現場指揮所と現場集結拠点を設置する

【第18回】災害対応の初動対応のあり方

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