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【第17回:日本一分かりやすいICS講座】現場指揮所と現場集結拠点を設置する

2020.01.17

前回のコラムにて、事態対処部門は現場で活躍する第一線部隊だとお話ししました。今回は、その事態対処部門が、現場に置く拠点(主に「現場指揮所」と「現場集結拠点」の2つ)について解説いたします。

現場に置く拠点の種類

本コラムでお伝えするのは、以下の4つになります。

  1. 現場指揮所:事態対処部門の本拠地となる場所です。災害の発生場所の様子を、安全に把握できる場所に置かれます。
  2. 現地調整所:現場指揮所を設置した、それぞれの機関(被災当事者、警察、消防、自衛隊、自治体など)の連携をとるための調整場所です。
  3. 現場集結拠点:現場に乗り込む前に、部隊のメンバーが集合したり、必要備品を手渡す場所です。
  4. その他:基地(Base)、宿営地(Camp)など

ICS(インシデント・コマンド・システム)では、現場指揮所は必須となる拠点であり、それ以外の拠点はインシデントの種類・規模に応じて置かれたり置かれなかったりします。各拠点の詳細はこれから説明していきたいと思います。

①現場指揮所

現場指揮所は、事態対処部門の本拠地となるとても大切な拠点です。先述のように、どんなインシデントの種類・規模でも必ず置かれるのが現場指揮所となります。

現場指揮所はどこに置かれるか?:マンションで火災があった場合

「現場指揮所」というと大袈裟な感じがしますが、考え方は意外とシンプルです。先ほど申し上げた通り、現場指揮所は災害の発生場所の様子を、安全に把握できる場所に置かれるのです。例として、マンションでの火災をあげてみましょう。

警報機の鳴っているところへ自衛消防隊の方が行ってみると、6階の東側のお宅から煙が上がっています。

このとき現地を見た人は、安全な西側のエレベータホールから、マンション管理室に次のように報告をするとします。

「火災は東側6階エレベータホール前の6××室で発生!」
「住人の避難は確認済み。怪我人なし」
「東側エレベータの使用は危険。西側のエレベータは使用可能」
「6階西側エレベータホールの消火栓は使用可能」
「煙は7から8階まで上る可能性があり」

このとき、安全に・災害の様子が把握できる場所(=西側エレベータホール)が、初期段階の「現場指揮所」となります。

現場指揮所はどこに置かれるか?:大規模な工場で火災があった場合

それでは、打って変わり、マンションではなく広い敷地をもつ工場で災害が起こった場合はどうでしょうか?

マンションとは比べ物にならないくらい広いですよね。そのような場合には、本部棟から離れた場所の正確な情報(災害の種類、有害物質の有無・性状、危険因子の有無、残留物、風向・風速・気温等)を把握する必要があります。

また、公設消防等への的確な引継ぎをするためにも、適正な離隔をとった安全な場所に、現場指揮所の設置をすることが必要になります。

消防の方々が到着すれば、指揮権が移譲され、よく見かける旗が立っていてテーブルやテントが設置される本格的な現場指揮所になるわけです。

現場指揮所の設置は、災害対応にかかわる人々の安全を確保するためにも、的確かつ合理的な災害対応の方向性を決めるためにも必要なのです。

現場指揮所はどんな場所にも置かれる可能性がある

現場指揮所の形は、特に決まっていません。野天で椅子や机だけの場合、テントやトレーラー内、建物内等いろいろな形があります。風水害の場合なら、公民館の中にできることだってあります。

②現地調整所

ユニファイド・コマンド(多機関連携)※が正常に機能するならば、現地調整所を設ける必要などありません。
(※ユニファイド・コマンドとは、被災当事者、警察、消防、自衛隊などの複数の機関が、機関の垣根を超えて連携し、災害対応にあたること)

日本の場合には、被災当事者、消防、警察、自衛隊等が、隣接する場所にそれぞれの指揮所を持つことがあります。そのような時にそれぞれの機関を調整する役割をするのが「現地調整所」です。

災害の規模が大きくなればなるほど、現地関係機関の円滑な連携を確保する場所として、「現地調整所」が置かれ、各所属の現地代表者が参加して、災害対応を調整することもあります。

③現場集結拠点

次に現場集結拠点について説明します。こちらの用語の原語はStaging Area(ステージングエリア) です。原語の通り、現場集結拠点はこれから舞台(Stage)にあがるまえの「待機所」のイメージです。

どんな災害でも、消防をはじめとして、複数の部署や機関の方々の協力を得ようとするならば、一旦、皆さんが集まる場所は必要ですよね。

たとえば、ボランティアの方々に、ご協力をいただくとしても、「どこどこの場所に、○○時にお集まりください」というように、集結拠点は必要になります。

集結拠点では、必ず、チェックインをして、安全対策を含めた戦術的な打合せをして、必要な防護具をつけ、それぞれの与えられた役割に応じて「出陣」していくわけです。

現場に集結することで、どんな人たちが参画しているのかも分かりますよね。他の人たちとの情報交換も含めて、どのような動きが展開されているかを肌で感じることができます。現場集結拠点を設けるメリットは大きいですね。

④その他の現場

そのほかに現地に展開される施設としては、主要な資器材の発注・受注・配送・在庫状況等を管理し、現場第一線の戦いをサポートする「基地(Base)」や、飲食物や医療サービスの提供を行う「宿営地(Camp)」などがあります。

大切なのは、一旦甚大災害が起きたら、必ずこのような機能が現地に必要になるので、だいたいの場所でも良いので、平時から想定しておくことではないでしょうか。
いずれの場所についても、有害物質発生の可能性があれば、適切な離隔距離を確保した場所に設置するとともに、必要に応じては立ち入り禁止区域を設けます。
(どのくらいの離隔距離をとればよいかは、弊社書籍『危険物・テロ災害初動対応ガイドブック』をご覧いただくか、弊社研修「有害・危険物災害対応研修(HAZMAT研修)」をご受講ください)

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【第4回】インシデントが起きたら初めにやること①:まずは指揮者(Incident Commander)を決めよ

【第5回】インシデントが起きたら初めにやること②:被害状況を把握せよ

【第6回】インシデントが起きたら初めにやること③:「何はともあれ人命優先」が危機対応の最大原則

【第7回】インシデントが起きたら初めにやること④:メンバーのチェックイン、チェックアウト

【第8回】組織づくりの基本①:組織の機能の洗い出し

【第9回】組織づくりの基本②:モジュラー型組織

【第10回】組織づくりの基本③:スパンオブコントロール

【第11回】組織づくりの基本④:指揮命令系統の一本化

【第12回】組織づくりの基本⑤:災害対策本部(EOC)

【第13回】組織づくりの基本⑥:指揮と調整の違いについて

【第14回】インシデント・コマンド・システムにおける目標設定

【第15回】計画(IAP:インシデントアクションプラン)を立てる

【第16回】事態対処部門(Operations Section)の役割・組織編成のやり方

【第17回】現場指揮所と現場集結拠点を設置する

【第18回】災害対応の初動対応のあり方

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