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【第9回:日本一わかりやすいICS講座】組織づくりの基本②:モジュラー型組織

2020.01.09

前回のお話では、ICS(インシデントコマンドシステム)で絶対に忘れてはいけない5つの基本機能についてお話ししました。

1.現場指揮者、    2.事態対処部門、   3.対策立案部門、    4.後方支援部門、   5.総務部門、  こんな機能があることを学びましたね。

でも、インシデントによっては2.~5.を設置しなかったり、兼務してもいいよと言ったりしているので、ICSの概念ってとてもフワッとしたもののようにお感じではないでしょうか?

皆さんがそのように感じていたとしても、それは正常な反応なのでご安心ください。そもそも、ICSは従来のようなガッチリと決まった組織で、いつもその固まった体制で戦う組織とは、一線を画するものですからね。

時によっては少人数で、時によっては500名を超える大人数で、時によっては専門家だけで、時によっては市民も含めたあらゆる人に参加してもらうなど、インシデントの内容や場面で、柔軟に変化していく組織形態をとっていくのです。

それについては、今回お話しする「モジュラー型組織編制の考え方」のお話を聞いていただければ、だいぶ理解が進むはずです。

ICSにはコレと決まった組織体制がそもそもない

第3回でもお伝えしたかと思いますが、インシデントの規模に応じて、事態の収束までにかかる時間とか必要な人数は違ってきます。

交通事故の事後対応やボヤ消しならば、せいぜい2〜3人がちょっと時間をかければ事足りることです。東日本大震災クラスの地震がきたら、もう数百人レベルでの対応では済まないことです。

では、どのような基準で人を増やし、組織を大きくするのでしょうか?

その基準は、インシデントが起こった時点で、どのような機能が求められているかによります。

例えば、火災が発生していれば、消火という機能が必要になりますし、怪我をしている人がいれば、応急手当という機能が必要になります。行方不明者が出れば、捜索・救助の機能が必要になるかもしれません。

逆に、課題は解決して、そのような機能が必要なくなれば、人を減らし組織も縮小していくことになります。

モジュラー型組織は状況に応じた柔軟な組織づくりのこと

モジュラー型組織とは、こうしたインシデントの規模に応じて、その都度柔軟に組織を編成することです。

「モジュラー」という言葉は、ものづくりの業界の「モジュール化」からきています。モジュール化とは、部品の共通化のことです。例えば、「PHV車で使っているエンジンをほかの車両にも使えるようにする」とか、「1種類の革シートを高級車にも一般車にも使えるようにする」といったやり方です。

ICSの組織編成は、ものづくりのモジュール化と同じ考え方です。インシデントに応じて、必要とされる組織をあたかも部品をはめるかの如く、現場の組織にピシリピシリとはめ込んでいく感じです。

  • 家の火災ならば、消防士が駆けつけて消火、救助を行う。
  • 化学工場の爆発事故くらいになれば、工場長が現場指揮者(IC)と事態対処部門長を兼任して他の社員の現場指揮にあたる。
  • 3.11ほどの大震災の場合には、現場指揮者の権限のもと、事態対処、対策立案、後方支援、総務と必要部門を網羅し、長期的な目線で活動する。

といった形で。

柔軟な組織編成を素早く行うには日常の教育訓練が必須になる


柔軟な組織編成とはいっても、何の訓練もなしにいきなり柔軟に組織編成をしろと言われても、なかなか簡単にできるものではありません。

自由に組織編制ができるということは、ある意味では、現場指揮官の力量が発揮させることを意味しています。ICSの発祥元の米国では、山火事、9.11のテロなど、度重なるインシデントの都度、ICSの経験知を積み重ね、その知見を尊重し、国家として永く学んできたのです。

ICSを定着させるならば、ルールを決めてはいおしまいというわけにはいきません。あらゆるインシデントを想定して組織づくり・標準化を行い、本番を想定した訓練を何度もやらなければなりません。

弊社のICS研修の中でも、このモジュラー型組織編制の演習を行うと、効率性と安全性に配慮した的確な組織編制を行う現場指揮者とそうでない指揮者がはっきりわかる場面があります。それだけ現場指揮者にとって、モジュラー型組織編制を理解・習得することは重要なのです。

日本防災デザインは、企業さまを対象にしてICS(インシデント・コマンド・システム)の定着のための支援を行なっております。

  • うちの会社ではどうICSを取り入れれば良いの?
  • BCPを立ててみたけど本当にこれだけで大丈夫なのか不安がある。

こうした疑問があるようでしたら、ぜひ一度、弊社までお問い合わせください。

文責: 志村邦彦

ご質問・お問合せ:shimura©jerd.co.jp  (©を@マークに変えて送信ください)

日本一わかりやすいインシデント・コマンド・システムのコラム一覧

【第1回】インシデントコマンドシステムの概要・インシデントとは何か?

【第2回】オールハザードとは何か?

【第3回】インシデントの5タイプ

【第4回】インシデントが起きたら初めにやること①:まずは指揮者(Incident Commander)を決めよ

【第5回】インシデントが起きたら初めにやること②:被害状況を把握せよ

【第6回】インシデントが起きたら初めにやること③:「何はともあれ人命優先」が危機対応の最大原則

【第7回】インシデントが起きたら初めにやること④:メンバーのチェックイン、チェックアウト

【第8回】組織づくりの基本①:組織の機能の洗い出し

【第9回】組織づくりの基本②:モジュラー型組織

【第10回】組織づくりの基本③:スパンオブコントロール

【第11回】組織づくりの基本④:指揮命令系統の一本化

【第12回】組織づくりの基本⑤:災害対策本部(EOC)

【第13回】組織づくりの基本⑥:指揮と調整の違いについて

【第14回】インシデント・コマンド・システムにおける目標設定

【第15回】計画(IAP:インシデントアクションプラン)を立てる

【第16回】事態対処部門(Operations Section)の役割・組織編成のやり方

【第17回】現場指揮所と現場集結拠点を設置する

【第18回】災害対応の初動対応のあり方

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