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災害対策本部の役割とすべきこととは?災害の長期化に耐えうる組織体制

2019.10.31

台風15号、19号につづき、台風21号や低気圧の影響により、
各地に甚大な被害が発生しました。
亡くなられた方々にお悔やみ申し上げるとともに、
被災された皆さまにお見舞い申し上げます。

現在も事業復旧に全力で取り組まれている
企業や組織の方々に、衷心より敬意を表したいと存じます。
 
今回の、台風15号にはじまる一連の災害は、
千葉県や福島県をはじめとする東日本の各地域に、
「新しい形の災害対応」が求められることを示しました。
 

小ダメージの積み重ねがもたらす大ダメージ

暴風、豪雨による建物損傷や地崩れ、浸水。その後、河川の堤防決壊による広域浸水や、
多地点同時の土砂災害が発生し、拡大していきました。

多くの尊い命や貴重な財産が失われ、道路網の寸断、長期の停電、
通信手段の途絶という、基本的なインフラが損傷する重大事態をもたらしました。

2つの大きな教訓

そのことは、今後の災害対応を考えるうえで、2つの教訓となりました。

一つは、災害の頻度が増し、連続することにより、結果的には、
被災が長期化する可能性があるということです。
企業や組織においては、ロングスパンの災害対応も
考えておくべきであること。

二つ目は、災害の頻度増加と長期化により、様々な災害が
複合的に絡み合い、ダメージを拡大させていく可能性があります。
企業や組織においては、災害種別を特定せず、
状況変化に応じたオールハザード対応が必要となることです。

災害対策本部の役割とは?

本格的な長期の戦いになったとしたら、それは組織力を活用する必要があります。
このコラムでもご説明してきたように、災害対応は、第一線現場の方々が中心となります。

第一線現場の活躍無くして、災害復旧が進むことはありません。

それを支援するのが、災害対策本部です。

災害が甚大で長期戦になればなるほど、災害対策本部の役割が増してきます。

インシデント・コマンド・システム(ICS)では、現場第一線と
災害対策本部の機能をはっきり分けています。

災害対策本部の大きな役割は、
「現場第一線が最高のパフォーマンスを出せるよう支援する」ことと、
「最高経営責任者の意思決定に資する的確な情報とその分析を提供する」ことです。

災害対策本部がすべきこととは?

具体的に行うこととしては、

・戦略:現場状況と外部情報をふまえた、現状分析、意味づけ、方向性の検討

・情報確保:適時適切な情報提供と目的認識の共有化、通信手段の確保

・要員投入:状況に応じた適切な組織編制と要員の配置

・気力維持:気力保持(やる気、集中力)と、そのための体力の保持(十分な食糧と休息の確保)

・物資補給:必要な資器材の調達と配送

などです。

物品の調達から戦略の決定まで多岐にわたります。

参画する人は、一担当者から最高経営者までいろいろな階層の人が関係してきます。

組織を円滑に進めるためには、会議体のプロトコル(参加者、議題、決めるべきこと)を
階層ごとに決めておいて、それを一定期間のサイクルとして回すことが合理的です。
 

災害時の効果的な復旧計画の作り方

プランニングP

インシデント・コマンド・システム(ICS)では、
それを「プランニングP」という概念でまとめています。

ご覧のとおり、インシデントの発生時から段階的に行うべき事項と、
それぞれについて、誰が参加し、どのようなことまでを決めるかが、
定められています。

また、それぞれの会議で使用する様式も決まっており、
それに必要な情報は、ICSの各組織から集められ、
決定された事項は、各組織にフィードバックされます。
 
このことにより、
・発災時から、次に行うべきことの手順が明確化されます
・会議に使用する書式が決められており、収集する情報が洩れなく集められます
・決定事項が即配信され、災害の現状と現在の取組状況を共通認識としてもてます
・会議が階層分化(内容面、参加者面)されているので、効率的かつ専門性が高い議事が期待できます。
 

Oプランニング

ご覧のとおり、プランニングPの初動対応部分が、
「P」の文字の下の部分になります。

したがって、初動対応が過ぎると、このサイクルは「P」の文字の直線部分が消えて、
「O」の文字のようになります。この、災害対応サイクルを「プランニングO」と称します。
 
プランニングOでは、常に情報収集し、状況に応じた戦略を立て、戦術を考察し、
それを計画(インシデント・アクション・プラン)に落とし込み、
実際に行った結果を評価し、それを戦略立案に役立てるという、PDCAサイクルが回ります。
 
長期化、複合化する災害対策のために
今回の台風および豪雨にみられたように、災害が長期化し、
複合化しつつ被害規模が拡大してくことを想定するならば、
上記のプランニングPのような会議体運営を粛々と回すことで、
全社員の意識が統一されていたほうが、組織力を生かせるものと思います。

また、初動段階が過ぎて、プランニングO に移行した際は、
1サイクルを8~12時間位に設定して、
指揮者を含めて全員が交代することを原則としているため、
関係者の集中力や目的意識も維持され高い効率性が期待できるとともに、
安全、健康面についても良好かと考えます。
 
 
ICSの概念にもとづくプランニングPの詳細は、
当社のコンサルティングもしくは「災害対策本部運営研修」で、
ケーススタディを活用しながら実践的にご紹介しております。

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