コラムCOLUM
HOME - コラム / 【コロナ禍の複合災害】意思決定のための情報管理は万全か?

【コロナ禍の複合災害】意思決定のための情報管理は万全か?

2020.07.13

日本防災デザイン代表の志村邦彦です。

新型コロナウイルス感染症が増加しています。り患された皆さま及び関係者の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
また、大雨により全国各地で被害が拡大しております。

お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆さまに謹んで衷心よりお見舞い申し上げます。

今回は、複合災害だからこそ、やっておかなければならない「入手情報の管理」について触れてみたいと思います。

複合災害だから大切になる情報管理
コロナウィルス禍の中で水害、土砂災害、地滑り災害等、複合して災害が発生しました。

このような「複合災害」の時に、経営者や危機管理担当の方々に、やっていただきたいことがあります。

それが「入手情報の管理」です。

複合災害の入手情報管理、絶対外せない3項目
複合災害になると、災害種別が増え、当然単一災害の時より、情報のやり取りや、調査すべき情報が一気に増えます。

発災後になってから、いろいろ調整を始めるのでは、遅く、インシデント・コマンド・システム(ICS)では、
次の3つの事項の実践を促しています。

1.インタオペラビリティ(相互運用性)の確保

インタオペラビリティ(相互運用性)とは「情報共有手段や手順や優先順位をしっかり決めておき、予め使えるようにしておきましょう」ということです。

今回の災害でも一部で通信手段が不通に
今回の災害では、一部地域で固定電話や携帯電話が使えなくなったり、使いづらくなっています。現場と災害対策本部の間、本社と支社・支店の間で、「何を連絡手段とするか」「優先順位はどうするか」を決めておくことは大切です。

連絡手段が使えなかった例は多々あります
通信会社の設備が被災した場合以外にも、連絡手段が使えなかった例はあります。
3.11の東日本大震災では、衛星無線の携帯電話も装備していたが、屋内では通じず、使用するためにはいちいち外に出なくてはならず、実質的には使えなかったという例もありました。

また、よくあるのは、災害訓練でトランシーバーを配布したら、バンドの合わせ方・発受信方法・会話区切り等が不慣れで、訓練にならないといった例です。

装備しておくだけではだめで、実際に使えるようにしておくことも必要だということですね。

2.入手情報を決めておく

二つ目は、「情報収集、分析、評価、共有のプロセスを行うためには、予め入手情報を決めておきましょう」ということです。

当たり前のことのようですが、下記のことができていますか?

意思決定に必要な情報
危機対応の意思決定をするのに、
現場第一線からあがってくる被害の状況、対応の状況、今後の展開見込み等の組織内情報は問題なく把握できていると思います。

ところが、「複合災害」となると、外部のいろいろな情報が必要になってきます。

例えば、
・コロナ感染状況
・気象
・海象
・規制区域
・道路事情
・交通・輸送状況
・通信
・電気
・水道
・ガス等インフラ状況
・病院の収容力等です。

何かをやろうとすれば、総合的な情報把握が必要となります。

必要情報は何で、どこから、いつ、誰が集めるのか?
上記の情報は、いろいろなところから入手できのですが、意外にその都度集めるとなると、様々なサイトを覗きにいかなくてはなりません。

複合災害となると、調べる事項も増えます。
効率的な危機対応をするなら、どの情報を、どこから、どのような頻度で、誰が集めるのかを決めておく必要があります。

3.「入手情報ソース」の共有化

3つめは、「関係者の間で、どこから情報を得るのか、そのデータソースを決めておきましょう」という話です。

3.11の実話
データソースに関して、3·11の時の実話です。

公的機関の間で、電話でお互いが地図を見ながら打合せをしていたのですが、どうも話がかみ合わない。
そこで、お互いの地図の作成元を確認したところ、それぞれ別の会社だったそうです。

地図情報はウェブでも紙媒体でもいろいろなところから提供されていますが、目標物とかが微妙に違ってきたりしています。

米国の常識:共通理解には共通情報が必要
緊急時に適切な意思決定に必要な情報ソースを予め決めておくことは、米国では常識です。

それは、Essential Elements of Information(EEI)と呼ばれ、意思決定に使う情報ソースはあらかじめ、関係する機関ときちんと決めておくことで、情報共有の互換性を高めることとされています。

火事なのに、防火扉の内側に有効情報があっても意味がない
米国でも、危機対応にあたって、必要な情報を共有しようと思っても、意外に「著作権を含む知財権」や「会員限定」などのハードルですぐにできないとか、情報提供元が違うために誤解が生じたりすることがありました。
そこでICSにおける多機関連携を補完する情報の共有化EEIが発展したのです。現在では、全米情報共有化協会(National Information Sharing Consortium)という組織があり、米国はもとよりカナダの政府機関(軍を含む)、州政府(消防、警察を含む)、民間事業者、NPO等が、危機対応時に、事態把握・情報共有のために参照できるデータソースを提供しています。

意思決定する足元の脆弱性改善のために
以上のとおり、「複合災害」に対しては、
①相互運用性を確保すること、
②入手情報を決めておくこと、
③共有する情報ソースを決めておくこと

について述べましたが、日本の組織の場合、これらに対する取組は極めて弱いように思われます。

特に➂については、未だその対策をしているところを見たことはありません。

不確実性の中で、経営者には短時間での意思決定を迫られる昨今ですが、
上記は、危機対応における「インプット情報の整備」ということですので、
これが脆弱であれば、当然「意思決定(アウトプット)の質が落ちること」も懸念されます。

上記のような取り組みは、すぐにできることですので、一度チェックされてはいかがでしょうか。                                   

以上

share: facebook twitter google+ line