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台風19号のような甚大災害発生後、組織は何をすればよいか?

2019.10.15

台風19号で、多くの方がお亡くなりました。謹んでお悔やみ申し上げます。

被災された地域、企業及び組織の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
また、今現在、救助・救援・復旧に、懸命に取り組まれている方々のご尽力に、敬意を表したいと存じます。

前回のメルマガでは、甚大災害を想定したときに、「企業や組織が事前に行うべき災害対応策」をお伝えいたしました。
不幸にも、台風19号は、15号を超える人的、物的被害を出す惨事となってしまいました。

重ねて衷心よりのお見舞いを申し上げるとともに、今回は「企業や組織が、発災後に行うべき災害対応策」について述べてみたいと思います。

特に、災害復旧の時間とコストを決める、災害対応第一線のあり方について触れてみたいと思います。

災対対応には、基本原則がある

インシデント・コマンド・システム(ICS)では、発災後の初動対応で行うべきことは次の事項として明示されています。

もし、今現在、台風19号の対応をされているとしたら、
抜け洩れがないかチェックしてみてください。

● 現場指揮者を決め、権限を委譲する
● 適切なサイズアップ(現状確認)をする
● 必要な機能を洗い出し組織を拡張する
● 参加者の把握(チェックイン、チェックアウト)をする
● 事態対処部門(Operations Section)を立ち上げる
● 災害対策本部(EOC: Emergency Operation Center)を立ち上げる
● 全体目標・実行計画を策定し、PDCAを回す
● 現場指揮所と現場集結拠点を設置する
● EOCは現場を支援し、現場が効率的に運営できるよう調整・支援する

災害対応の成否は現場第一線にあり

災害の対応にあたるのは、災害対策本部でも広報部門でもなく、現場第一線の「事態対処部門」です。

この最前線で戦う事態対処部門の組織編制やその支援が大切であることは、言うまでもありません。

通常の業務であれば、経営の効率性追及の観点からライン部門とスタッフ部門を明確に区分します。

災害対応では、ラインが現場第一線の事態対処部門で、
スタッフが災害対策本部(EOC)となるのですが、
その線引きがあいまいであるがゆえに、非効率になっていることが、多々あります。

割り当てがないがゆえに、部署により繁閑の差がでて、
「全社対応」にならない場合も見受けられます。

事案の規模や性格によっては、災害対策本部ですべてを
指揮命令することもありますが、今回のような甚大災害の場合は、
ラインとスタッフの区分をはっきりさせて、それぞれが専門特化することで
効率性を追及すべきです。

現場第一線業務の機能の明確化

肝心なことは現場第一線業務の機能を明確化すること

その際に、多くの企業や組織でみられるのは、「現場第一線業務」をBCPなどで、
消火、救助、負傷者救護等を想定しますが、災害後の実際の業務としては、
散乱した資材の片付け、排水処理、清掃・廃棄物処理、
生産ラインの応急措置、損傷機器の調達手配等ではないでしょうか。

この機能の明確化が大切なポイントです!

ICSでは発災時の最前線の組織編成については、
「事態対処部門」としてその中を
「エリア別ディビジョン」
「機能別ブランチ」
「ストライクチーム」
「タスクフォース」
「専門家活用」
というような編成の形を定め、
それを適宜組み合わせることとしています。

スポーツにおける、プレーヤーの「ポジション」にあたります。

ポジションを明確にすることで、一人ひとりが役割を認識し、
自分で考え、主体的な行動がとれます。

たとえば、被災した敷地内に工場が2つあれば、
「エリア別」に
A工場ディビジョン、
B工場ディビジョンと分け、
その中を、
清掃・廃棄タスクフォース、
応急措置ストライクチーム、
復旧設計ストライクチーム、
調達タスクフォースと
分けることで、それぞれの役割が明確化します。

また、それぞれの業務のプロジェクト管理ができるようになります。

必要に応じて、それぞれの現場業務を直接的に指示する「現場指揮所」を置いたり、
現場に乗り込む前に、メンバーが集合したり、必要備品の配布や、必要な飲食物の
サービスを受けたりする「現場集結拠点」を置くことも、
効率的な災害復旧に役立つものと思われます。

復旧の時間を短縮し、復旧コストの削減をはかるとすれば、
現場第一線業務を機能面から再定義することで、
現場の体制・組織編制あり方が見えてきますし、
合理的な後方支援の仕方も生まれてくると思われます。

 災い転じて福となす 

この台風15号、19号の経験から、現場第一線業務が
「実際にはどのようなことであったか」を、
冷静に分析して、効率的な災害対応を実践するために、
災害対応の全体体制のあり方の観点から、もう一度BCPを見直してみては、
いかがでしょうか。

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