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【緊急事態宣言の解除後】新しい危機管理の観点から、タイムラインを見直すには

2020.05.21

株式会社日本防災デザインの代表の志村邦彦です。

前回のメルマガでは、新型コロナウイルス(COVID-19)禍は、「はじめて体験するインシデント」のステージから、「繰り返すインシデント」のステージに格上げして対応する段階に入ったとお伝えいたしました。

今回は、その「新たなステージ」になったCOVID-19禍に対して、組織として、どのように備えるかについて、触れてみたいと思います。

COVID-19禍は終わっていない!

緊急事態宣言は首都圏と北海道を除いて解除されました。でも、前回のメルマガで申し上げたとおり、 COVID-19に対して有効なワクチンが開発されたわけでもありません。

また、今後の経済活動の再開により再度流行が発生したり、テロの蓋然性が高まることによって、あってはならないことではありますが、それが現実化したりすることも、危機管理の観点からは想定しておく必要があります。

「タイムライン」に工夫が必要

既に作成していた、BCPの「パンデミック災害」を見直すにしても、また、新たにその項目を付加するとしても、BCPの構成要素の中では「タイムラインの作成」に、他の災害にない点を考慮する必要があります。BCP作成の順番を追って説明します。

BCP作成の王道に従えば、、、

BCPの見直しをするなら、まずは、「どのような被害が起きるかを想定したシナリオ」を作ります。この辺は、実際に、現在体験中ですので、書きやすいかと思います。

強いて言うなら、今のところは、日本の全国民の協力により沈静化していますが、今回のように上手くいかなかったら、インフラ関係の人たちが仕事現場に行けないくて、電気、ガス、水道、通信、交通機関、運輸等の基幹産業に長期間支障をきたすことも「リスク想定」として入れても良いかもしれません。

シナリオができたら、その災害に、社内のどこの部門・部署がどのように係わるかの、役割・機能分担表を作り、関係者で共有します。この辺も、今回の体験から何が必要だったかがよくわかっています。

ちょっとふり返りの時間をもてば、事前調達や備蓄等でやるべき「事前の行動項目」も、「発災後の行動項目」も、今のうちなら、具体的に沢山出てきて、リスト化するのも簡単だと思われます。

ここまでは、いつものBCPの作成のやり方と同じです。

この先には、シナリオ想定に基づき、時系列とともに、誰がどう動くかを想定したタイムラインの作成になります。

新タイムライン作成にあたって配慮すべき点

通常、大災害のタイムラインは、ヨコに社内の関係する部門・部署や、社外のお取引先や連携すべき機関(消防、警察、自治体、監督官庁等)がならび、タテにやるべきことが時系列にならんだ、大きな表になります。

台風や地震に対するタイムラインと比べると、パンデミック災害のタイムラインを作成するときには、次のようなことが、大きく違うのではないでしょうか。

【ポイント1】時系列の単位をどうとるか

通常の自然災害等を対象とするタイムラインで、例えば台風でしたら、「発生から上陸、上陸から通過、そして被災回復するまでの間」という比較的区分しやすい時間軸となります。

今回のCOVID-19禍でわかったように、いつからを自社の災害起点とするか、いつを自社の収束点とするか、その時間軸をどのように設定するかは、悩ましい点かと存じます。

少なくとも、「時間単位」でもなく、「日にち単位」でもなく、最短でも「週単位」、現実的には、「月単位」、長ければ「半年単位」とか「年単位」になるかもしれません。

【ポイント2】関係者をどうするか

企業の危機管理担当者の多くの方々から出ていた声としては、「自社でやれることは限界があり、結局は行政からの指導待ち。自社でどうこうできる話でもない」とのこと。関係者を誰として、どこまでの範囲とするのかも悩ましい点かと思います。

【ポイント3】新しい対応策をどうするか

今までのBCPのリスク回避策は、「災害の発生場所からの距離をとる」(生産機能の移転・移管、 他部門他事業所・関係会社からの応援、外部への委託 等)ことでしたが、それらができないこともわかりました。発災後の時間経過とともに、抜本的な業務の見直しも必要となってきました。

そもそもタイムラインは「一点もの」!

上記の3ポイントは、新たに設定しなければならないことなので、標準があれば参考にしたいところですが、新型コロナウイルスの性状でさえはっきり確定していない状況では、タイムライン作成の参考となるような標準的な時間軸を語ることは誰もできません。

ただ一つ確かなことは、御社における、この一連のインシデント対応した実績は事実だということです。

考えてみれば、災害対応はそれぞれの組織の置かれている状況(業種・業態・規模・所在地等)において千差万別です。会社ごとに、事業所ごとに、対応タイムラインも違ってきて当然で、他に同じものがないとするなら、これまでの対応実績は貴重なエビデンスです。

今のところ、「新型コロナウイルス対応のタイムラインはどうあるべきか?」という問いの答えは、御社対応実績の丁寧なふり返りにしかありません。上記の3ポイントは、ふり返りのアフターアクションレビュー(AAR)をするときの、大切な視点になると思います。

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