株式会社日本防災デザインの代表の志村邦彦です。
日本における新型コロナウイルス(COVID-19)感染者数の減少傾向に伴い、政府は本日、39県で緊急事態宣言を解除すると発表しました。北海道、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、京都は引き続き宣言の対象ですが、それぞれの企業においても、操業の再開や自宅待機の解除に向けて検討がされていると思います。
そこで、緊急事態宣言の解除という一つの区切りを控えて、経営者はどのようなことに留意し、今後の対策をしなければならないかを考えてみたいと思います。
前回のメルマガでは「事態の収束」を、インシデント・コマンド・システム(ICS)の観点から、どのように評価するかをお伝えしました。その中で、アフターアクションレビュー(AAR)とかアフターアクションレポートとして触れました。その観点から、「状況のふり返り」の大切さについてもう少し詳しく触れてみたいと思います。
新たな危機管理ステージにはいった新型コロナウイルス(COVID-19)対応
緊急事態宣言の解除という一つの区切りを控えて経営者が留意しなくてはならないことは、次の3点です。
留意点1:継続的な取組の必要性
感染者数が減少したとしても、有効な治療薬やワクチンが開発されるまでは、何らかの対策は継続して実施せざるを得ません。治療薬やワクチンが国民に普及できるまでには、1年以上かかるという声もあります。
留意点2:流行再発や、周期的流行定着の懸念
気のゆるみでなくしても、経済活動の再開により、再度流行が起きたり、毎年流行期が定着することも懸念されます。
留意点3:テロ攻撃手段として使われる蓋然性の高まり
何らの武器も使わずに、大量の死者や患者を出し、社会的な恐怖や混乱を引き起こし、経済的にも深刻なダメージを与えられるという事実は、テロ攻撃の手段として使われる蓋然性を高めたと言えます。
(詳しくは、弊社ホームページ 特殊災害・緊急コラム『新型コロナウィルス(COVID-19)は、CBRNE災害である①』https://jerd.co.jp/column/1051/ をご覧ください)
危機管理の2つの考え方
危機管理対応を大別すると、「これまで経験したことのない事象(インシデント)への対応」と「繰り返すインシデントへの対応」に二分されます。
これまで経験したことのない事象については、「場面場面(ongoing)の状況に応じて、最適と思われる課題解決」を、適宜行うことになります。
一方、繰り返すインシデントへの対応であれば、標準対応手順(SOP:Standerd Operational Procedure)や、インシデントシナリオや、タイムラインに従って、迅速な対応に着手することになります。
COVID-19対応は、「繰り返すインシデント」に格上げ?!
これまでにCOVID-19の特性や、感染の因果関係、その社会的な影響や、企業に及ぼす
ダメージが分かるようになってきました。また、前述のような「留意事項」を踏まえるならば、もはや、COVID-19は、初めてのインシデントとしてではなく、「繰り返すインシデント」として意味づける段階に来ていると思われます。
「繰り返すインシデント」に対して経営者が行うこと
台風や地震のように、繰り返して起きるインシデントに対する基本的な考え方は、準備段階でのリスクの評価、対応戦略・対応計画・対応策の策定、教育訓練、危機管理計画と実践のふり返り、新たな対応策への反映です。
具体的には、次なるCOVID-19の流行に備え、リスク評価をして、どのような影響が考えられるのかのシナリオを作成し、それに応じた、役割分担表、SOP、シナリオ及びタイムラインを作成することです。
今やらなくて、いつやるのか?
上記の作業は、面倒のようにも思えますが、各企業の「これまでのCOVID-19対策」について、ぜひ一度、アフターアクションレビューをして、アフターアクションレポートにまとめてみてはいかがでしょうか。
すでに、マスク・消毒液はどのくらい必要だとか、テレワークのためにどのようなシステムと資器材が必要だとか、どこから情報を得てどこと連携したらよいか等、様々なことがわかっているはずです。
小さなことから大きなことまで、対応の成功や失敗も含めて、記録をしておくことで、次の対応の迅速性、効率性を高めるとともに、今後の教育訓練におけるリアリティを高めることにもつながります。
このあと想定される流行にどこまで効果的に備えられるかによって、準備の費用対効果(コスト削減)を推進すると思われます。
そしてなによりも、経営に与えるこれまでにない甚大なインパクトを軽減することに繋がるのです。