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【コロナ特集】パンデミックの被害を最小限に留めるための組織体制の作り方 /特殊災害コラム第3弾

2020.04.22

コロナ特集第二弾の前回のコラムでは、「なぜ、危機が差し迫っても動かない人がいるのか?」というお話をさせていただきました。

特殊災害(CBRN災害)では、初動対応の遅れや間違った判断は、問題解決どころかそれ自体が問題となってしまう可能性があります。
それでは一体どのようにして迅速かつ適切な初動対応を実施できるのか?について具体的な解決策を考えていきたいと思います。

■パンデミックの被害を最小限に留める

オールハザード・アプローチの観点から言うと、特に特殊災害(CBRNE災害)では
全米防火協会(NFPA)472(危険物質・大量破壊兵器災害対応要員能力適正基準)で
定められたAPIE(ひと切れのパイと覚えてください)という手法を用いた問題解決プロセスの手法を
用いることが推奨されているので紹介したいと思います。


A ~ 分析(Analysis)
P ~ 計画(Planning)
I ~ 実践(Implement)
E ~ 評価(Evaluation)

1:A 分析(Analysis)

まず最初の“A”分析段階では、まず危機対応する者が一番最初にやらなければいけないのがサイズアップ(Size Up)と呼ばれている「状況把握」です。
状況把握の正しい理解は、実被害に被害想定の予測を加味して被害状況の全体像をとらえるということです。
今回の“Biological (生物学的)災害”においては、この被害の全体像を正確に把握するのが大変困難となっています。
日々報道で発表される感染者数もPCR検査が行き届かない中でどの程度の信頼性があるのかも定かでありません。

しかし、現在の死亡者数から新型コロナ肺炎の実数が推定できるという可能性や、
IgG抗体検査体制を構築し、それを積極的に実施する事によって抗体を有する人の絶対数を
把握する等の合わせ技を活用して、このフェーズにおいてはあらゆる英知を集結して現状の正しい分析及び情報収集を行うことが重要です。

2:P 計画(Planning)

次の“P”(Planning)計画段階では、まず対応の目標を決定します。

例えば今回のケースでは第一の目標を「命を守ると」いう事に設定した場合、

・そのための戦略(医療崩壊を防ぐ手段をはじめとする人員・資機材の配置)の決定

・戦略を実践するために必要となる具体的な戦術

 (適切なPPEの使用を含む総合的なゾーニング・マネジメント)

・拡大防止に必要な方策

・タイムラインに沿った当面の対応計画(Incident Action Plan:IAP)の考案

等があげられます。

この計画段階がなぜPlanではなくPlanningかというと、
情勢は常に目まぐるしく変化していきますので、現在進行形の“~ing”という視点が必要になります。

3:I 実践(Implement)

次の実行段階の“I”(Implement)です。
ここでまず一番最初に来るのがインシデント・マネジメント・システム(現場指揮システム)を実行することです。

米国では2001年9月11日の全米同時多発テロ事件以後、
緊急業務を行う関係機関は共通言語の使用と共通の指揮体制を確立する必要があるとの判断を下しました。

インシデント・コマンド・システムの体制を組むことで、
数時間で措置可能な小隊規模単位での事故事案から、
複数の機関と多くの支援部隊が介入する数日から数週間に及ぶ複雑で大規模な災害事案まで、
あらゆる規模の災害に対応できるよう設計されています。
また、現場から基礎を構築するので、あらゆる施設や組織が応用できる構造になっています。

今回のコロナ災禍では当初CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が
統合指揮体制に組み込まれていなかった為初動が遅れたとの話も出ています。

【関連コラム】日本一わかりやすいインシデントコマンドシステム

実行段階においては先ずインシデント・マネジメント・システムを実行し、関係各機関と情報を共有し必要な援助を要請します。

また今回は特に“Biological (生物学的)”災害の観点から、
医療施設における適切なゾーニングや動線管理を実施し交差汚染(クロス・コンタミネーション)を回避する方策を徹底して医療崩壊を防ぐことに重点を置く必要があります。

これらの具体的な技術支援も弊社としてサポートできますのでご相談ください。
エビデンスはNFPA®(全米防火協会) の能力適正基準を参照しています。

4.E 評価(Evaluation)

さて最後に“E”Evaluation評価段階が来ていますが、実はこれは最初の“A”分析段階からすでに始まっています。

つまりこの「評価」はリスクコミュニケーションも含めたすべてのフェーズで
繰り返し実施しなければならないプロセスということになります。

・分析は正しかったのか?

・計画したアクションは効果的で沈静に向かっているのか?

などを俯瞰的に評価します。

最近の報道では救急隊員や医療関係者にも多くの感染者が発生しております。

次回は現場の最前線で活動しなければならない方たちのために

「個人用保護具(PPE: Personnel Protective Equipment)」の基本概念について解説したいと思います。

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