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【台風19号 緊急対策】企業や組織が甚大災害の発災前に備えておくべきこと

2019.10.09

この週末、大型で猛烈な勢力を持つ台風19号が日本列島に上陸することが予想されています。

台風15号(9月9日)の影響は甚大で、様々な被害と社会問題まで引き起こしました。そして、また、その台風を上回る猛威が我々に迫っています。

今回の日本防災デザイン通信では、甚大災害が発災する前に、どのような対策を取ればよいのか、その考え方について述べてみたいと思います。

皆様の組織・会社に被害が及ばないことを祈ると同時に、万一の事態に備えてお役立ていただきたく存じます。

今回の台風19号は甚大災害である

台風15号は、ICSの災害規模の基準からすると、レベル1の甚大災害にあたります。

今回の19号も上陸すればレベル1に相当する対応が必要になり、そうなれば「甚大災害」に分類されます。(災害レベル:弊社ホームページ お役立ちコラム『【第3回:日本一わかりやすいICS講座】インシデントの5タイプ』参照)

前回の台風15号を経験し、それぞれの立場で、いろいろな対応をし、被害に遭わなかったとしても、報道等を通じて様々なことを、見聞きしたと思います。

この直近の貴重な経験を少しでも、台風19号対策に活かしていただければと願います。

組織が発災前に整備しておくべき事項

通常災害に対する危機管理の視点からすると、「発災前に整備しておくべき事項」としては、大きく分けると、以下の4つの視点になります。

1.基本的なリスク回避策の取り組み
2.コミュニケーション及び情報マネジメント機能の整備
3.業務の標準化
4.教育と訓練

あと、3日間で何をすればよいのか?

台風の上陸を数日後に控え、これからでは間に合わないこともありますが、まだまだ出来ることもあります。

上記項目は、オールハザードに対する一般論ですが、今回は、災害を「台風」に限定することで、それぞれの企業や組織で、上記の視点から台風15号の経験をふまえて、再度検討すれば、やれることはあります。

以下に解説しますので、少しでも備えていただき、防災・減災するとともに、早い復旧に繋がることを心からお祈りします。

1.基本的なリスク回避策の取り組み

一般的に、災害へのリスク回避策としては次の4つがあげられます。

①設備リスクの回避

重要設備の安全サイトへの移設などを指しますが、費用と時間がかかるので、通常、直ぐにはできません。

ただ、今回台風を想定するなら、強風被害、浸水被害を見越して、工場の重要設備や、倉庫の資器材を一時的に簡易移設することも可能であれば検討に値すると思われます。

②設備強化

重要設備の耐震化、防水化、堅牢化等を意味します。前回の台風15号では、強風による屋根の剥離や高潮による浸水等で被害が出ていた場合、同様の被害かそれ以上を想定して、仮設の補強策をとっておくことが求められます。

③備蓄強化

通常、食料、個人用保護具、医薬品、燃料等の備蓄を指しますが、台風15号によって、再度、明らかになったのは、「燃料確保の重要性」だったのではないでしょうか。
停電と通信不通があり事業継続に支障をきたしたことは言うに及ばす、組織内で、自律的に復旧にあたろうとしても、発電用、作業用、運搬用の燃料確保と調達が困難であったと思われます。燃料調達は、まだ、間に合います。

一方、台風の性格上、通過地域では大きな被害が出たものの、その範囲は限定されたため、飲食物や医薬品や保護具等での供給支障は、一時的には出たものの、長期化はしませんでした。

台風15号で、サプライチェーンのどこに支障がでたかが、企業ごとに把握できたため、具体的な備蓄の品目や必要量は見当がつくのではないでしょうか。

④災害保険等、リスク転嫁策の検討

通常、被災影響度が高いリスクに対して、災害保険等の検討がなされます。保険契約を結ぶためには、一定の時間が必要とされますので、直ぐには無理としても、検討はしておいても良いのかもしれません。

一方、適切な多機関連携(自治体、警察、消防、インフラ企業、同業他社 等)が実現することで、発災以降を自社単独で対応するより明らかにリスク減少することが見込まれるならば、具体的な連携について協議を始めることは、直ぐにもできることと思われます。

2.コミュニケーション及び情報マネジメント機能の整備

災害対応において、優先的に確保しておかなければならない機能は、コミュニケーションおよび情報マネジメント機能として以下の事項があります。

①状況認識の統一(Common Operational Picture:運営状況共有画面 )

災害対応状況と達成目標を認識し、状況に応じたPDCAを回すためには、コミュニケーション手段の確保と対応記録の保存が必要です。統合危機管理システム等の機械システムに限らず、手書きでも実施することは可能です。

このやり方については、予め組織内で決めて、共通認識をはかるべきと考えます。すでに、台風15号の反省点として、「社内の状況認識がはかれていなかった」という声があがっています。

②相互運用性の確保

どのような通信手段(音声、画像、メール、SNS等)を、どのような優先順位で使用するか。また、それぞれの使用方法も、予め訓練しておく必要があります。例えば、緊急用のトランシーバーを手配していたが、実際の現場では上手く使えなかったという事例もあります。

③信頼性、拡張性、可搬性

通信手段は、冗長性(災害が起こった時のバックアップや安全性)確保を含めて、発災以降の円滑なコミュニケーションをとるためのシステム整備、機器整備をはかっておく必要性があります。

④広報等情報発信

企業や組織の社会的責任として、災害対応に関する情報発信は必要となりますが、そのための情報収集方法、分析、意味づけ、及び発表までのプロセスについて、予め決めておく必要があります。

特に、復旧見込みの発表については、注意が必要となります。(弊社ホームページ お役立ちコラム『復旧時間の見通しをどう広報すべきか?災害対応とその広報のあり方について』参照)

3.業務の標準化

発災後の円滑な災害対応を実現するためには、事前に次のことを整備しておく必要があります。

①共通言語化

災害対応時の誤解を避け、意思疎通の円滑化をはかるために、使用する用語の統一をはかっておくことが求められます。特に、多機関連携をする際には、重要です。

②業務の標準化(標準運営基準の制定)

災害対応を合理的かつ効率的に行うには、予め災害対応の手順、会議体のありかた、及び審議事項(プロトコル)を定めておく必要があります。今回の台風の対応について、「社内各組織がばらばらで円滑に進まなかった」との反省の声もあがっています。

③資機材・装備規格の制定

台風15号対応で、新たに必要となった資器材、装備品が明確化された場合、調達品の規格、品番等を定めておくことは、今後の対応に役立ちます。

4.教育と訓練

災害対応の全社共通認識をはかり、効率化を高めるためには、一定の教育と訓練は必要です。この数日ではできないとしても、計画的な教育と訓練機会の提供は、災害対応の考え方の共通認識を高めることになります。

以下に弊社が提供している教育・訓練をご紹介いたします。

インシデントコマンドシステム(ICS)初級研修
・ICS本部運営研修(SOPとPlanning P)
・想定災害対応訓練
・企業救助隊養成研修(Corporate Emergency Response Team :CERT)

発災後に行うべきこと

今回は、「発災前に整備しておくべき事項」をとりあげましたが、
「発災後に行うべきこと」については、
弊社ホームページ コラム『【第18回:日本一わかりやすいICS講座】災害対応の初動対応のあり方』をご参照ください。

今回、ご紹介した内容はすべてインシデント・コマンド・システムの考え方に沿って、お伝えをさせていただいております。

事前に発災後のマネジメトに関して熟慮しておくことは、その後の復旧に大きな影響を及ぼしてくるのではないかと思います。

是非、ご参考にしていただき、被害の縮小化、復旧時間の短縮にお役立ていただければ幸いです。

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