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甚大災害に対する経営マネジメントのあり方/初動対応で経営者がやるべきこと

2019.10.02

さて、今回は「甚大災害に対する経営マネジメントのあり方」についてご説明したいと思います。

なぜ経営者が初動対応から積極的に参画しなければならないのか

台風15号の影響は大きく様々な場所で社会問題が引き起こりました。

初動の対応いかんが直接的に経営に影響する事態となった事はご案内の通りです。

BCPの教科書などでは、経営者が災害対応の旗振りをしなければいけないと書いてありますが、
経営者がなぜ災害対応を真剣に取り組まなければいけないのかその背景は語られていません。

法律や条例を守ることはもとより、企業の社会的責任や企業倫理に
責任を持つこともあります。

しかし今回は、経営マネジメントの観点から、経営者が甚大災害の初動から積極的に関与すべき背景を考察したいと思います。

甚大災害に対する経営者のミッションとは

1.大きな決断をしなければならない

甚大災害対応において決定することを、ざっくりと区分すれば

●その場に居座り生産もしくはサービスの提供を続ける
●拠点を移して(他工場等で)続ける、もしくは、他社に委託する
●全面撤退する、

といった大きな判断が求められます。
それは経営者でなければ決断できません。

2.不確実性の高い中で、短期に決めなければならない

一たび甚大災害が起これば、「短期集中投資」が必要で
それも『超』短期間で『超』大きな投資となります。

下手な新事業開発投資よりはるかに規模も大きく、リスクも高い投資です。

しかし、甚大災害時には、被災に関する情報が、
十分に入ってくるとも思えません。

また、その情報や見込みがすべて正確であるかも疑わしものと思われます。

そのような不確実性の高い中での意思決定は、経営者でなければできません。

3.結果責任を負わなければならない

株主や顧客や全ての利害関係者および社会のために、費用支出を抑え、
早期に操業再開し、通常業務体制を取り戻すか。

そのための一番合理的な意思決定し、
結果として実現できたかが求められます。

では、上記のミッションを達成するために、
「どうやるか」という話になります。

甚大災害でまず経営者がすべきこととは?

経営者は、災害対応の的確な組織を編成し、
常に最新の状況を把握し、常に戦略を更新できるような
管理サイクルを確立する必要があります。

まずは、災害対応の組織を編成します。

・災害対応現場の組織とスタッフの組織を区分します。
・指揮命令系統の一本化をはかります。
・組織は、必要な機能に応じて弾力的に拡大し、縮小します。
・一人の上司の管理限界を超えないように組織拡大します。

次に、以下の管理サイクルを確立します。

・状況調査(サイズアップ)します。
・分析、意味付け(インテリジェンス化)します。
・方針と実行計画を立てます。
・人の配置と必要物品の割当・供給を行います。
・上記を一定時間のサイクルとして回し常に戦略を更新します。

読者の皆様はお気づきのとおり、
これは、経営学原理の教科書に書かれていることです。

そのような、経営原則は、平常時の経営に限らず、
甚大災害時の経営にも当てはまります。

上記は、どの項目もICS(インシデント・コマンド・システム)の基本事項で、
逆な言い方をすれば、
「ICSは経営原則に従って編制されている」とも言えます。

規模のメリット(スケールメリット)の追及

一方、平時の経営でいうなら、
「規模のメリットの追及」も大切な事項です。

平時においては、盛んに企業同士が大同団結をしたり、企業買収がおこなわれています。

その目的とするところは、規模のメリットにより、
売り手の交渉力や買い手の交渉力により
マーケットシェアの拡大を図ったり、
研究開発費の削減や一般管理部門の合理化を進めることです。

実際に、利益率、売上高伸率、売上高利益率等にその成果が表れています。

「規模のメリット」に関する経営原則は、
甚大災害時の対応にも効きます。

甚大災害対応を一拠点だけの「単独」でやる事は不合理です。

ICSでは、様々な機関が大同団結することを「多機関連携」と称しています。
むしろ、災害対応は多機関連携を前提としています。

多機関連携は、資材調達を含めて規模のメリットや運営の効率化を推進します。

また、多角的視点からの分析から策定した戦略が深みを増し、リスクを減らして、
コストも削減する可能性があります。

経営者のミッションを全うするには

経営者のミッションは
「短期間に大きな方向性を決め、大きな投資を集中的に行い、
しかも結果を出すこと」であり、
甚大災害の発災後に上記のような施策を速やかに展開することが重要です。

そのために発災前に行っておくべきこともあります。

経営者が、短期集中決戦を、予想して、予測して、優先順位付けした
資器材の備蓄(燃料等)強化をしておくこと。

多機関連携を前提として、どのような他企業、自治体等との連携を組むかを考えて、
災害発生前に協定を結んだり、合同訓練をしたりすることの意義は高いと思われます。

最後に

改めて、災害対応をICSの視点で構築していくことは
上記のようなミッションを果たしていく上でも有効です。

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