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甚大災害の発生初動において経営者は何をするべきか?

2019.12.06

2019年は、台風の被害を受けた方も多く、図らずも日本の組織の危機管理に
対する意識が大きく変わった一年となったのではないでしょうか?

また、災害時の組織のトップ(経営者、首長等)の在り方や初動対応が
社会問題化しました。

今回のコラムではインシデント・コマンド・システム(以下、ICS)の視点から、
甚大災害時に経営者が何をすべきかについて4回にわたり考えてみたいと思います。

1回目は機会ロスの観点から見た経営者行動

2回目は甚大災害の最悪想定と課題の明確化

3回目は『災害バリューチェーン』からみた実効性のある施策

4回目は「災害対応の最前線をいかに支援するか」です。

今回は「機会ロスの観点から見た経営者行動」について述べてみたいと思います。

災害発生!
経営者が最初に指示することは?

企業経営者の方々に、「甚大災害が発生した際にまずやることは?」と
質問すると、往々にして、「災害対策本部を立ち上げる」
もしくは「社員の安否確認をする」というような回答をいただきます。

いずれも間違いではありません。しかし、ICSの考え方からすれば、
一番最初にやることは「状況の確認」です。

経営者が「災害本部の立ち上げろ!」と指示をしたことで、「状況の確認」が
後回しになることも懸念されます。

テロ等危険物・有害物質災害であれば、「最初の30分で勝負がつく」と
言われており、災害対策本部を立てる前に、
全館放棄するか、遮蔽籠城するかの意思決定が求められます。

また、確認された状況によっては、災害対策本部を設置しないで済むことも考えられます。

「機会ロス」が発生していないか

通常、経営者は各事業の発展性や期待収益率等を考えて、
将来に向けて最適なポートフォリオマネジメントをします。

限られた経営資源の中で、ある事業への投資を選択すれば、
他の事業へ投資する機会を失います。

これを「機会ロス」と言います。

そこで、経営者は「機会ロス」を最小限にし、
最高の成果を得るための方法を選択します。

甚大災害発生時も経営者の仕事は上記と同じように
「限られた資源の短期集中配分を、どこにするかの意思決定すること」とも言えます。

経営者の意思決定として
「災害対策本部を立ち上げる」
「状況の確認する」のどちらを選んだとしても、機会ロスは発生します。

しかし、機会ロスを最小限にし、最高の成果を得るための方法論がICSです。

BCPがあるから大丈夫?

「わが社には、しっかりとしBCPがあるから大丈夫」と言われることがありますが
もう一度、御社のBCPをご覧になられることをお勧めします。

通常のBCPは
「災害発生前」
「発災直後の時期」
「リカバリーの時期」
「通常業務に戻る時期」の
4段階の概念で構成されます。

しかし、発災直後に何をするかが具体的に書かれているBCPが少ないのが実状です。

発災直後は、とにかくやることがたくさんあり、その中で何を優先して選択するか。

ここで、どのような初動対応をとればよいかについて、
経営者の方々が逡巡しては機会ロスが拡大する可能性があります。

発災以降の一連の流れ

ICSでは、「オールハザード対応」として、どのような災害が発生しても、
対応すべき行動の一連の流れを、プランニングPとして示しています。

具体的には、災害の覚知→状況確認→最前線組織の編成→災害対策本部の設置→
戦略・戦術の策定→実行計画の策定→実施→評価・改善→状況確認、と続きます。

大切なことは、いかなる災害が発生しても、常に現場指揮者を置いて、
その指揮者を中心に設置すべき部門と、指揮者の参謀となるスタッフを
置くことにしています。

最前線体制の作り方です。具体的な体制としては下図のとおりです。

この概念があれば、経営者が「状況確認」の指示をした後に、やることは迷いがありません。

最前線体制構築の指示です。その後に、災害本部を立ち上げることも、
安否確認をすることも、もしくは備蓄もしくは宿泊先を
確保に着手されても構いません。

機会ロス回避

平時の機会ロスは、会社業績として収益率等の数字で
明確に示されます。

災害時の機会ロスは、数字で明確になりにくいのですが、
実際には生命や財産の損失に繋がります。

発災以降の具体的な一連の流れを、社内共通の認識にしておくこと
そのための訓練をしておくことが、大切です。

次回は「甚大災害の最悪想定と課題の明確化」を掲載いたします。

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