福島県及び南相馬市の公的消防関係者を主対象とした災害対応訓練
一般財団法人日本総合研究所 経営研究部 部長
一般社団法人ふくしま総合災害対応訓練機構 専務理事 佐藤和彦様
一般財団法人 日本総合研究所は、会長・寺島実郎が率いるシンクタンクで、今年50周年を迎えます。一般社団法人ふくしま総合災害対応訓練機構は、ふくしまイノベーション・コースト構想推進企業協議会の防災部会からスピンアウトして設立した組織ですが(平成31年4月1日設立)、弊所は設立にあたり経済産業省様からF/S調査(feasibility study)を受託したメンバーとして、設立後も運営の支援に携わっております。
なお、一般社団法人ふくしま総合災害対応訓練機構は、福島の復興、防災立国日本の実現、危機管理能力の高い日本人の育成といった長期的な視点からの社会貢献を目的としています。
マニュアルにない想定外の災害対応への方向性が見えてきた
研修実施の背景
ふくしま総合災害対応訓練機構は、設立以来、福島ロボットテストフィールド(南相馬市)を活用しつつ、人間系の災害対応訓練実施に必要な施設・設備を整備することを目的にここまで活動してきました。
今までにない、オールハザードに対応した訓練が行える常設の総合災害対応訓練施設が実現しつつあり、総合訓練を通じて多機関連携の促進にもつながるものとして期待されています。
当機構は、福島県及び南相馬市と密接に連携しながら活動を進めており、今回実施した訓練は、試行的実施として福島県から県内の各消防本部様にお声かけいただき、弊機構正会員(株)日本防災デザインが訓練実施担当として実施いたしました。
試行的実施でしたので、30名の定員で募集いたしましたが、大変盛況なお申し込みを頂き2日で定員に達しました。
参加できなかったというお声もいただき恐縮しております。
参加者は、消防士、危機管理担当者、行政職員の方々でした。
1日目は、危険物・テロ災害初動対応訓練(HAZMAT研修)を、
2日目に、災害対策・指揮・調整訓練(インシデント・コマンド・システム研修、以下ICS)を実施いたしました。
ICS研修は災害対応における基本的な考え方や組織論を学ぶことができる
合理的かつ効率的に危機・災害へ対応するたには、様々な知見を活かしたシステム的な思考が必要です。その面では、アメリカに一日の長があり、また、国際基準としてのエビデンスとして広く普及している上記の2つの研修から実施することにいたしました。
今回の参加者は公的消防関係者が中心でしたが、ICS研修は一般企業の災害対応においても、押さえておくべき基本的な考え方や組織論を学ぶことができる研修・訓練となっております。
一方的な情報提供で終わることなく、受講者が主体的に考えるプログラム
当訓練の特徴は、座学ではあるものの、演習が多数、組み込まれていることにあります。そのため、よくある講師からの一方的な情報提供で終わることなく、受講者が主体的に考えるプログラムとなっています。
熊丸由布治講師の進行で、参加者は、提供された情報を基に主体的に考えることを求められる訓練プログラムの構成ですので、飽きがなく進めることができました。 カードに意見を書いたり、ディスカッションしたり、発表することによって、習得度が増していたようです。そこが高い評価になったと思います。
特に、ICS研修では、リアルなケーススタディをグループワークで進めますので、実体的な経験をすることができました。さらに、受講者に応じて想定シナリオを柔軟に改変できるという点も、優れていると思います。このような点が受講者の高い評価を受け、ご好評を博した理由だと思います。
受講者からは「このような実践的な訓練をしたいと思っているけれども、なかなか機会がなかったので、とてもありがたかった」という意見が寄せられました。
ICSはビジネスの組織マネジメントと同じ考え方
私は、組織学会の会員になっておりますが、ビジネスの視点から見ても、ICSは基本理念や方法論に共通点が多いと思います。
例えば、災害対応で「インシデントがエスカレート(拡大)していく状況に際して、どのように柔軟に組織編成していくか」ということと、ビジネスで「
プロジェクトが加速度的に拡大していく状況に際して、どのように対応チームを増やしていくか」ということは、
本質的には同じです。
何か問題が発生して、緊急対応を要する時に、どうやってフロント体制とバックアップ体制を構築するのか、その方法論を知っておくことは、防災訓練という枠を超えて、ビジネスマンとしてプロジェクトを運営し行く上での様々な局面で役立つのではないかと自分自身が受講した経験からも実感しております。
全国的にICSが広まることを期待しています。
そのような観点から、全国のあらゆる組織にICSを普及していくことが大切だと思っています。
今年度は、新型コロナウイルスの感染が広がっていますが、オンライン、オフライン含めて、月に1回ほどはレギュラープログラムとして実施していきたいと思っています。
また、より実践力を高める演習を含めた中級、上級編に関しても、できるだけ、速やかに実施できるよう準備しています。