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複合災害時代に求められる機能とは? 米国「国家準備目標」より

2020.10.11

日本防災デザイン代表取締役の志村邦彦です。

秋の初めから、いくつかの防災訓練や危機対応訓練に関わったり、見せていただいたりしました。いまさらですが、今年は新型ウイルス対応がベースとしてあるので、何をやっても「複合災害」訓練になっていました。

株式会社日本防災デザイン 代表・志村邦彦
【プロフィール】2011年3月11日の東日本大震災を東京電力の執行役員として経験。災害時における効果的な組織体制づくりの必要性を認識し、当社を創業。

訓練の準備から実施は本当にたいへんな作業

こんな時代ですから、どの訓練や演習においても、主催者の皆さまは、本当に苦心されていました。初期段階に、「今年はどうするか」いろいろなアイディアを出しながら、工夫して訓練計画書やシナリオを作り、コロナ対策にも配慮した実行案を作り、上司や経営会議に諮ると、また、そこでいろいろなご注文が出て何度も計画を修正します。

工場や支店やグループ会社も巻き込む総合訓練となると、事前の打ち合わせも必要になります。当日の開始直前までいろいろ準備をして、本番を実施するのですが、終わった後にもいろいろなことを言われたりして、傍から見ていると、その大変さが実感できます。

毎年の悩みを軽くする方法

そこで今回は、防災訓練や危機対応訓練の企画から、実施、最終評価までを、「楽にしながら、中身の濃いものにする」方法について述べてみたいと思います。わたくしどもからすると、訓練の目的・目標とチェック項目が書かれた表を一目すれば、その組織の危機対応力がどの程度のレベルかはだいたい想定できます。

まずは、目標(ゴール)を明確にしましょう

意外に手間取るのは、目標の設定です。「今年の訓練は何をテーマにしようか?」ということで悩み始めると、災害別(台風、地震、洪水、地滑り等々)にするのか、機能別(通信機能確保訓練、指揮命令系統確立、後方支援体制整備、情報発信・広報等々)するのかで、迷走します。

ダメなケース

目標の設定は重要です。
例えば、「台風対策」みたいな災害種別の目標を掲げると、設備避難、避難、情報収集、本部体制、、、、とありとあらゆることが含まれてきます。一方で、「他の災害はやらなくていいの?」みたな意見も出てきます。

一方、例えば、機能別にしたとしても、「非常災害対策本部運営」というような漠然とした目標とすると、「ただ集まればよい」簡単な訓練なのか、「通信確保、指揮命令確立、燃料・食糧を含めた後方支援体制整備等」重たい総合演習なのか、はっきりしません。

良いケース

おすすめは、目標の設定(ゴール)は、まずは「機能別」に「やるべき行動」が明確になるテーマを選ぶことです。

例えば、「情報公開をするための訓練」とすれば、どのように、現場第一線(工場、支店・支社、関係会社等)から情報を収集し→その情報を取捨選択し→プロセス処理(雑音、雑事のスクリーニング)し→分析し→コンテンツ化(まとめ)し→公表・配信し→その結果を評価するかという、一連の「インテリジェンスサイクル」を訓練することになります。
その際に、ケース事例として、台風、地震、洪水、テロ等を想定することは、実効的だと思います。

お手本(ガイド?あんちょこ?)が、実は、あります!

「訓練は機能別に考えろと言われても、どんな機能を考えたらよいかわからない」という声もあろうかと思います。

そこで、「米国国家準備目標(National Preparedness Goal)」の参照をおすすめします。そこには、米国が危機対応に必要な機能を、コア機能(Core Capability)として32個ほど、指定しています。

危機対応を考える際の1丁目1番地

国家準備目標とは、『最大のリスクをもたらす脅威や危険を防止、保護、軽減、対応、回復するために、コミュニティ全体で必要とされる機能を備えた、安全で回復力のある国家を目指す』というものです。

この短く、すっきりとしたステートメントが、全米の全組織をカバーするのです。

「コミュニティ全体」には、連邦政府、州、地方、都市、地域自治体、民間事業者、非営利団体、宗教組織等のすべての米国内の組織が含まれます。

32個の機能は、①「テロ防止」のために行うもの、②「防護」のために行うもの、③「被害軽減」のために行うもの、④「危機対応」のために行うもの、⑤「回復」のために行うものと、5つの領域に区分されています。(機能の中には領域を共通するものもあります)

「テロ防止」「保護」「軽減」の領域は発災前で、「危機対応」「回復」の領域は発災後にもとめられるコア機能とも言えます。

具体的には、表のとおりです。

ミッション領域別_コア機能一覧【日本防災デザイン版】

オールハザードの概念で機能重視

ご覧のとおり、表の中には、台風、地震、洪水といった災害名称はありません。考え方としては「オールハザード対応」です。「どんなインシデントでも、これらの機能で対処できるようにしておきなさい」ということです。もちろん、これ以外の機能を自分たちで付加することもできます。

ただし、これらの機能は、全米のすべての組織が、役割分担を含めて「準備」をしているわけですので、もし、自分の組織だけで手に負えないとなれば、その他の組織に応援を頼む(エスカレーション)ことができます。

訓練計画は復数年単位で組む

危機対応の一番最初は、自分たちの地域や組織にとって、重大な影響をもたらすことは何かを想定し、その危機や危険に対して、この32のコア機能の何がどのように必要となるかを見積もります。

当然、いくつもの機能が必要となるので、それを単年度の訓練だけで整備することはできません。複数年にわたり、継続的に実施することになります。特に、この複合災害の時代においては、必要な機能も増えざるをえません。

このコラムの冒頭のように、毎年その時々のテーマに即して、訓練を実施することも大切ですが、もう一方では、米国のように、まずは、ゴールの全体像を描いて、そのゴールをめざして、中長期的な視点から、必要な機能を一つひとつ積み重ね、いつでも相互応援できる体制を整えておくことも、強靭な防災国家を創るには必要かと思います。

この辺の米国危機管理の全体像については、次回以降にもお話したいと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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