株式会社日本防災デザインの代表の志村邦彦です。
日本全国が、コロナウィスル禍になり、どこの企業も大変なご努力をされていると存じます。
一方で、大阪府知事から、自粛解除に向けた大阪府版の出口指標が公表され、それがいろいろな関係者の間で話題となっているのはご案内のとおりです。
【リンク】NHKニュース
この「災害対応は何をもって、どのように収束すればよいか」ということについて、あまり触れられたものがありませんので、今回は、災害対応マネジメントの手法であるインシデント・コマンド・システム(以下ICSという)の観点から、企業における「事態の収束」についての留意点について触れてみたいと思います。
災害対策本部の収束をきめるのは最高意思決定者だが
それまで全社を統括してきた災害対策本部の収束は、
もちろん経営の最高意思決定者になろうかと思います。
ところが意外に、社内マニュアルなどにも「収束」に関しては、明確に記載されていない場合が多く、どうしようかと迷われるのではないでしょうか。
災害対策本部が解散しても、災害対応は終わらない
この新型コロナウイルス対応で、災害対策本部を立てた会社は、政府や自治体の発表する情報や、専門機関や専門家の見解を参考にしながら、操業を再開したり、災害対策本部を解散するかもしれません。
しかしながら、感染のリスクがまったくなくなったわけではないので、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、各種薬剤の配置、3密を避ける会議方法等の対策は、暫く続くものと思われます。
5月4日に厚生労働省発表が発表した「新しい生活様式」もご覧ください。
いつを終わりとするのか?
「いつを終わりにするのか?」 これは日本を問わず、どこの国でも難しい判断にならざるを得ません。
そこで、ICSの中では、かなり初期の段階から「対策立案部門(プランニング・セクション)」の中に、「動員解除ユニット」を設けて、検討を始めることになっています。
計画を造る部門が、終わらせることを考えるというのも変な感じがしますが、その意味するところは、「資源の効率利用のためには、いつまでも必要以上の災害対策体制を引きずることを良しとしない」ということです。
災害対応組織は、モジュラー型組織編制で、必要な機能に応じて拡大していきますが、一方で、その機能の役割が終わった場合には、収束すべきだというチェック機能もICSには含まれています。
したがって、「動員解除ユニット」は、常に、国や自治体の動きや、専門機関の情報を確認することになります。
収束過程を大切にする
「弾力的な組織拡大もするけど、弾力的な組織収束もする」、しかし、その終わり方を大切にするのがICSです。
最終的には動員解除によって、事態は収束したことになります。そしてその決定には、何よりも災害対応の第一線現場に立つ現場指揮者の意思が尊重されます。
収束に向けて現場指揮者には、次の2つのタスクが課せられます。一つがアフター・アクション・レビューで、もう一つがアフター・アクション・レポートです。
アフター・アクション・レビュー (AAR)
AARは。概ね、一つのインシデントで区切が付いた場合や、事態収束時点においてなされます。
テーマとすれば、次の項目が中心となります。
・そもそも我々の目的、目標は何であったのか?
・その目標に対し、 実際には何が起きたのか?
・なぜそうなったのか?
・どのように改善するか?
上司が部下に問いただすのでなく、ファシリテーターが、それぞれの行動を評価することなく、対応にあたった当事者の肉声を引き出すようにします。当事者自らが目標と実績の乖離や、その原因を、体験に基づき語り合い、当事者自らが改善策を考案することを、ICSでは求めます。
アフター・アクション・レポート
AARの内容は、アフター・アクション・レポートとしてまとめられます。それは、必要に応じて、国や自治体や企業のインシデントに関する最終報告書や事態検証レポートに活用されます。
また、企業ごとに作成されている、災害対応の標準運用基準(SOP:Standard Operating Procedure)に改善事項として反映される事もあります。
コロナウイルスのインシデントはつづく
今回、ICSの観点から、収束について触れさせていただきましたが、国や自治体の「収束宣言」が、あったとしても、各企業の新型コロナウイルス対策はつづきます。
皆様の職場でもこれまでの取り組みについて一旦振り返ってみて、収束に向けた新たな目標を設定、計画してはいかがでしょうか。
引き続きのご活躍ご健勝をお祈り申し上げます。