オーストラリアの最新防災訓練施設 調査完了!


○台風16号の被害に対して

オーストラリア滞在中も、日本で 台風16号の影響で死者や行方不明になられている方や、避難や被災された方々、また農作物にも甚大な被害が出たことは知ることができ、こころから心配しておりました。まずは、尊い命を失われた方やそのご家族に哀悼の意を申しあげるとともに、行方不明の方々のご安全を衷心からお祈りし、被災されたすべての方にお見舞い申しあげます。

 

○今回の視察の目的

台風16号が日本に迫っていた9月19日から、9月23日まで3泊5日の日程で、オーストラリアのメルボルンにある「ヴィクトリア危機管理総合訓練センター(The Victorian Emergency Management Training Centre (VEMTC)」の視察調査をしておりました。unspecifiedw0e9d74z%e8%a8%93%e7%b7%b4%ef%bd%be%ef%be%9d%ef%be%80%ef%bd%b0%e5%85%a8%e6%99%af

今回の視察も、「日本にも世界各国にある危機対策総合訓練施設を創るべきだ」という考えから、そのためには、世界の最先端の総合訓練機関の実状を調べようと、数年前から取り組んできた活動の一環です。

 

○スケールの大きな米国だけでなく

これまでの海外調査は、米国を中心に取り組んでまいりました。訪問調査個所は以下のとおりです。

  • テキサスA&M大学エクステンションサービス(世界的にTEEXとして知られる)
  • グッドフェロー空軍基地内のルイス・ガーランド消防学校(テキサス州)
  • 100%民間運営のガーディアン・センター(ジョージア州)

米国の施設は、それぞれに、広大な敷地に、多数の巨大な訓練施設が配置され、すみずみに訓練のためのノウハウが蓄積されていることに、ただただ感心するばかりでした。一方で、それだけのスケールの大きな施設だけに、運営費も巨額となり、そのまま日本に導入するには困難性が高いとも考えておりました。

この辺の詳細レポートは、務台俊介・熊丸由布治他共著『3.11以降の日本の危機管理を問う』(2013年)晃洋書房にも記載されていますし、弊社の有料レポートとしてもまとめてありますので、ご用命があれば、お問い合わせください。

 

○コンパクトな施設の実態を求めて

これまでが米国中心で、あまりにもスケールが大きすぎたので、「日本に建設するとなると、もう少しコンパクトな設備も調査しておく必要がある」との観点から、今年は、7月に台湾 内政部消防署訓練センターを、そして今回9月には、オーストラリアのヴィクトリア危機管理総合訓練センター(VEMTC)訪問となったわけですunspecifiedhh69zhxc%e3%83%97%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%88

メルボルンの中心からバスで1時間程のところにある当該訓練センターは、視察前の想定どおり、約20,000坪の敷地の中にオールハザード対応の最新設備が集約されており、米国の訓練施設と比較すると非常にコンパクトにまとめられておりました。

 

○建設までの経緯

当センターの建設については、計画が正式に決まった2009年から、今回の我々の調査と同様に、世界の訓練設備を視察調査したそうです。訪問先はイギリス、スコットンランド、オランダ、シンガポール、ドイツと、訪問先にもお国柄が出ているようで興味深く伺いました。

その後、施設を利用するであろう52グループの意見や討議を含め、多方面からの検討を経て、2010年には本格的な設計に着手し、2013年2月から建設が始まり、2014年4月に竣工し、同年6月29日にオープンしました。総工費は約$109 million(約110億円、2014.6.29豪ドル-円約101円換算)。

 

○設備概要

当該訓練センターはいくつかのエリアに分かれており、実際のヴィクトリアの市街地のレプリカのような住宅地、都市部、商業地、交差点、電車、トンネル、ガソリンスタンド、石油プラント等のモックアップが最新のシミュレーション設備と共に機能的に配置されています。unspecified378kmd01%e8%b7%af%e9%9d%a2%e9%9b%bb%e8%bb%8a

先にも書きましたが、オールハザード対応の訓練設備を約20,000坪の敷地面積の中に効率的に配置していますが、それでもオーストラリアでは最大規模の訓練施設となっています。その他にも約36,000坪の空地があり、既に、新しい訓練施設の建設計画が進行中との事でした。unspecified89sk556x%e9%a3%9b%e8%a1%8c%e6%a9%9f

 

○設備活用の考え方

この訓練センターでは、上記の多様な設備に、様々なシミュレーションを組み合わせることによって、際限なく訓練を創造できるようにデザインされているとのことでした。

例えば、化学プラントから有毒ガスが漏えいしたシミュレートをした場合、その有毒ガスが住宅街に流れ込んでしまうなどのシナリオを考えることも出来ます。そのことにより消防だけでなく、警察や救急救命、自治体、国、その他のファーストレスポンダーにとっても必要な訓練を創ることが可能とのことです。unspecified7vz9levo%e3%83%93%e3%83%ab

オーストラリアにおいても、ICS (Incident Command System)は存在しており、AIIMS (Australian Inter-service Incident Management System,1989)として、消防、救急、警察、軍、海事局等に浸透しています。そこには「Inter-service」の名のとおり、他機関連携が謳われており、当該センターにおいても、大災害避難や多数傷病者事案、またはテロ事案の対処など、警察や緊急業務に携わる指揮者向けの訓練にも対応ができるようになっています。

ご説明をいただいた海軍および警察出身の担当官によれば、訓練だけにとどまらず、災害対応の「Center of Excellence(COE)を目指す」とのことで、「最先端の研究設備と優秀な研究者を有し,世界的に評価される中核的研究機関となる」という高邁な目標を掲げられていました。

 

○運営および訓練対象

設備は、MFB (Metropolitan Fire and Emergency Services Board)という、地方自治体の局のような組織に属します。いわゆる公設・公営で、訓練対象者は消防・警察・救急救命および国・自治体の緊急時対応要員が中心で、正規職員のみならずボランティアも受け入れますが、民間企業の利用は受け入れていないようでした。

 

○温かい歓迎

今回の視察団の正式なタイトルとしては、「福島イノベーションコースト構想・防災教育研修拠点整備プロジェクト調査団」ということで、弊社社長の熊丸由布治のほかに、自主的にご応募いただいた10名のメンバーと共に行って参りました。img_5269

ヴィクトリア危機管理総合訓練センター(VEMTC)の皆さまには、日本からの調査団は初めてだったそうで、また、「福島復興事業の調査」ということもあったのか、とても歓迎していただきました。img_6628a

到着してすぐに、会議室で施設司令官の方から直々に、計画段階から設立までの経緯など、色々な苦労話を含む、心のこもったブリーフィングをいただくとともに、構内設備の特徴や工夫についても丁寧なご説明をいただきました。関係者の方々に、この場を借りて衷心より御礼申し上げます。

帰国する最終日にはメルボルンの中心部にあるMFBの本部に、表敬訪問をいたしました。そこで担当してくださった消防士の方々も、仲間を迎えるように、ほんとうに温かく熱心にご案内してくださいました。まさに「消防に国境なし」を改めて痛感した次第です。

 

○参考

ヴィクトリア州では、火災保険料の一部が消防予算に振り向けられています。2013年7月1日から、同州の住民は所有不動産ごとに定められた課税率で「消防税」を負担するようになったとのことです。ヴィクトリア州は州予算から、MFBへは年間運営費の12.5%を、CFAへは22.5%を歳出し、残りは消防税により賄われるとのことでした。

 

○総括

日程的には短い視察ツアーではありましたが、とても多くのことを学んだ充実したツアーとなりました。

全体の設備の規模や構成が日本の事情にも、とても合っているのではないかと思いました。それが故に、日本にもこのような総合防災訓練センターが、「必ず実現できるはずだ」と確信を深めることが出来ましたし、「どんな困難があっても必ずや実現しよう」と気持ちを新たにできたことがとても大きな収穫となりました。

弊社 日本防災デザインは、引き続き、日本の防災力向上に全力で取り組んでまいります。皆さまの変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 

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